【絵が完成させられない人へ】「絵を完成させる」ポイントを添削付きで紹介

2020年4月28日

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絵が上手くなりたいなら全力で絵を完成させよう

という話を、一度は聞いたことがあると思います。

詳しくいうと、「自分の絵に足りていない部分や上手く描けない部分について、本やネットで調べて解決しながら、その時の自分の全力を出して絵を描こう」ということです。

この練習方法で僕も絵を描いているのですが、 絵を上達させるためにはかなり効率的 だと思っています。

ただ、実際のところ、この練習法は初心者にとって少しハードルが高いんですよね。

なぜなら、「初心者は絵の粗を見つける能力に長けていないから」です。

でも、 「絵を完成させるうえでどこを見たらよいか」という点を知れば、初心者の方でも比較的簡単にこの練習方法を実践することができます。

ということで、今回は「絵を完成させるうえでチェックするべきポイント」をいくつか紹介したいと思います。

今回はYouTubeTwitterで活動されているヤマモトアキさんから添削用のイラストをお借りしました。

アキさんは、クリーチャーや風景を中心に描かれています。

前置き:添削前後の絵を比較してみよう

一枚目、こちらがアキさんの描き上げた作品になります。

二枚目、僕が三時間かけてリタッチしたものになります。

どうでしょうか。

位置関係が整理されて見やすくなったのではないでしょうか。

では、ここから本題の「絵を改善・完成するうえでのポイント」を紹介していきます。

主役が明確になっているか

まずは、 「イラストの主役が明確になっているか」 確認しましょう。

なぜこれが重要なのかというと、「主役が明確になっていないと、鑑賞者にコンセプトを感じ取ってもらえないから」です。

音楽で例えると、全部サビみたいな曲はどこを聞いていいか分かりませんよね。

Aメロ・Bメロが脇役でサビが主役という構造になっているからこそ、サビのメッセージ性がスッと伝わってくるわけです。

それと同じように、 絵も「ここを見てほしい!」という部分を絞るほうがコンセプト(絵を通して伝えたいこと)が分かりやすい絵になります。

今回のイラストで考えると…

では、先ほどの添削前のイラストをもう一度見てみましょう。

山との関係から生物が非常に大きいことが想像できますが、手前に立っている人が大きく写っていることで、生物の大きさが伝わってきにくいと思います。

そこで、今回は「巨大な生物」を主役に据えたうえで、 「巨大生物の壮大さを鑑賞者に感じてほしい」という風にイラストのコンセプトを再設定します。

具体的な改善方法

人物を小さくする

「変形」を用いて人物を小さくしました。

これで、 生物と人の大小関係が分かりやすくなりました。

人物の顔の向きを変える

修正前の画像です。人物は仁王立ちしているように見えます。

これだと、人物の目線が生物に向かっていないように見えてしまいます。

右を向いているように見せることで、 人物の目線が自然に生物に向かうようにしました。

違和感を感じる点がないか

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この絵のキャラクター、可愛いんだけど背骨が曲がってるのが気になるなぁ…

というふうに感じた経験、ある方も多いのではないでしょうか。

絵として矛盾があると、鑑賞者に違和感を感じられてしまいます。

そうすると、鑑賞者の意識が絵の見せ場ではなく、絵の違和感に向かってしまいます。

なので、 技術的に甘く、他人に違和感を感じられそうな部分は事前に無くしておきましょう。

今回のイラストで考えると…

光の当たり方から考える

次にライティング(光の当たり方)の観点からイラストを見てみます。

近景と遠景で光源の位置が一致していないことが分かると思います。

画面奥から光が差しているのなら、人や近景は陰になるはずです。

空間表現から考える

まずは空間表現における違和感を洗い出します。

空間に関する法則には、下のようなものがあります。

  • 遠くのものほどかすんで見える
  • 遠くのものほど小さく見える

今回のイラストでは「生物の大きさから考えて、生物は遠くにいるはずなのに、生物がかすんで見えない」ので、そこを直していきます。

具体的な改善方法

近景を暗くする

「乗算レイヤー」を使って人物と草原を暗くしました。

これによって、 画面奥から光が差しているのが表現できました。

近景を暗くすることには、遠景に目を行きやすくさせるというメリットもあります。

生物をかすませる

生物をかすませました。

それにより、 生物が遠くにいるという状況を表現できました。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. 肩が白飛びしていたので、スポイトで周囲の色を取り加筆することで、肩のコントラストを弱めました。
  2. 「レベル補正」でコントラストを下げ、「自然な彩度」で全体的に彩度を下げ、「カラーバランス」で青色(大気の色)に寄せました。
  3. 線画の主張が強かったので描きつぶすことで、生物と背景の境目を馴染ませます。

細部を丁寧に描写できているか

絵の中で無意識のうちに妥協してしまっている点がないか 再確認しましょう。

特に、資料を集めずに描いている部分は、参考資料を探して描き直してみましょう。

僕は絵を描きはじめて二年になりますが、それでも他の方に見てもらうと詰めの甘さを指摘されてしまいます。

一番根気のいる部分ですが、その分絵を完成させる能力が鍛えられるので頑張る価値はありますよ。

今回のイラストで考えると…

手前の草原の描き込みが少し粗い気がします。

後は、生物の足の向きが揃っていることや、生物の体が真横を向いているのが気になりました。

それらを加筆していきます。

具体的な改善方法

草原を描きこむ

逆光の岩の輪郭をはっきり描いたり…

草のシルエットを複雑にしたり…

道の端の草の生え際を複雑にしたりしました。

関連記事:細部の描写でクオリティアップ!質感を意識して描くための6つのコツ

生物の足を修正する

次に生物を修正します。

↑加筆前の画像です。

「自由変形」を使って生物が画面奥に向かっているようにした後、アリの歩き方を参考にして六本足を配置し直しました。

実在する生物を参考にすることで、自然なフォームになったと思います。

視線誘導ができているか

最後に視線誘導ができているかを確認します。

視線誘導を意識すれば主役を見てもらいやすくなるので、かなり重要です。

一つ目の見出し「主役が明確になっているか」と内容がかぶりますが、見出しが長くなるので分割しました。

今回のイラストで考えると…

雲の流れと、手前から二層目の山脈のシルエットが真横に流れています。

これを生物の向きに合わせていきます。

視線の流れは、こんなイメージです。

具体的な改善方法

山脈のシルエットを整える

山脈のシルエットを修正します。

修正前の画像です。全体的に左右対称な印象を受けます。

わずかですが、右端を盛り上げることで左への視線誘導をしやすくしました。

雲に流れを作る

雲を右から左に流れるように描くことで視線誘導をしつつ、自然な奥行きを作りました。

ついでに、「色調補正」「オーバーレイ」を使って空の色を鮮やかにしています。

最後に:全体の雰囲気を整えよう

最後に仕上げとして全体の雰囲気を整えましょう。

グレアを描く

エアブラシを使ってグレア(眩しさ)を描きます。

今回のイラストでは、生物の下腹部の光のまわり込みや草原の光が強く当たっているところなどにのせました。

オーバーレイを使う



「オーバーレイ」を使って明るいところにオレンジ、暗いところにブルーをのせます。

これにより、 全体の統一感が増します。

オーバーレイを使った仕上げ方はアキさん自身もYouTubeで解説されているのでそちらも参考にしてみてください。

トーンカーブをかける

最後に画面全体の赤色が弱く感じたので、「トーンカーブ」をかけて赤色を強めました。

最後に

ということで、絵を完成させるうえで意識するポイントを紹介しました。

正直、絵を完成させるというのは、答えのない問題を解くようでかなり大変です。

でも、 この「絵を完成させる」ということを習慣化させることが出来れば、絵の上達はきっと早くなるはずです。

ちなみに、sessaというプロの方に絵を添削してもらえるサービスもあるようなのでそれらを活用するのも手ですね。

それでは。