色塗りでイラストを立体的に仕上げる最も重要なポイント【影をつける時「稜線」を考える】

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影のつけ方が全く分からない…

そんな悩みを抱えていませんか。

絵を描く人の中には、好きなイラストの塗り方を真似てみてもまったく似ず、塗りに苦手意識を感じてしまう方も多いのではないでしょうか。

しかし、そんな”塗り”も たった一つのことを考えて描くだけで劇的に上達させることができます。


 

今回は、立体的に見える絵とそうでない絵の違いを解説したうえで、塗りを立体的に仕上げるうえで最も効果的な「稜線を考えて塗る方法」を紹介します。

立体的に見えるかどうかのポイントは明暗の境界線にある

結論から書くと、 塗りで立体感を出すうえで最も重要なポイントは明暗の境界線(=稜線)にあります。

ここから稜線という言葉を多用しますが、「これは明暗の境界線のことを言っているんだな」と思って読み進めてください


 

言葉で解説するよりも実際に見た方が理解しやすいと思うので、まずは立体的に見える絵とそうでない絵の違いを見比べてみましょう。

以下が、”稜線を意識していない絵”と”稜線を意識している絵”です。

どうでしょうか?多くの人は、右の絵の方が立体的に感じるのではないでしょうか。

なぜこのように左右の絵で立体感に違いが出るのかを確認してみましょう。

初心者にありがちな塗りが立体的に見えない理由

塗り方が分からないと、図の緑色で囲った丸を別々に見るかのように塗り、パーツごとの輪郭を暗くしてしまいがちです。

その結果、10円玉の鳳凰堂の浮彫りのように、なんとなく立体的に見えるけど 奥行きを感じない絵になってしまいます。

稜線を意識した塗りが立体的に見える理由

一方、稜線を意識して塗ると、現実世界と同じように、光が同じ方向から物体に当たっているさまを表現できます。

そうすると、ちぐはぐな感じがなくなり、物体が同じ空間上にあることが伝わるので絵が立体的に見えます。

稜線を意識するにはどうすればよいか

稜線を意識すると塗りが立体的に見えることが分かったところで、次は稜線を意識するにはどうすればよいかを紹介しようと思います。

①球・円柱・立方体の稜線の位置を把握する

すべての立体の基本である球・円柱・立方体の稜線の位置を覚えておくと、複雑なものの稜線をとらえる際の下地になります。

下は3DCGでそれぞれの物体に斜め上から光を当てた時の画像です。

そして、稜線は以下の位置にあります。

球や円柱は表面が滑らかなので、陰影も滑らかに入るとついつい考えてしまいがちですが、画像を見ると稜線を境に明暗が存外はっきりと分かれているのが分かると思います。

光源の位置が変わったときの稜線の位置も知っておこう

基本的には上で紹介したときの光の当たり方を覚えておけば十分ですが、光の当たり方が違う時に稜線の位置がどう変わるのかを知っておくと、理解の助けになります。

球の明暗の入り方は月の満ち欠けによく似ています。

②描きたいものを3種類の物体の組み合わせとして考える

次は描きたいものを、球・円柱・立方体の組み合わせとして考えます。

理論的には、こうやって組み合わせたものに①で覚えた稜線の位置を当てはめると、描きたいもののおおまかな稜線の位置が分かるようになります。

例えば、先ほど使った上半身のイラストで考えてみると以下のようになります。

今回はできるだけ簡単に、腕は円柱を上下でつなぎ合わせたもの、胴体は円柱1つとしてとらえます。上図のように置き換えたら、稜線の前後で明暗を分けて塗れば完成です。

上図の青色の部分の影のつけ方は、今回とは考え方が異なるので別記事で紹介しています。


 

慣れてきたら、組み合わせが複雑なものや角度が複雑なものにも応用してみましょう。

稜線で塗り分けるときに役立つ3つのポイント

ここまで紹介したことは一見簡単なように見えますが、これらの知識を実際に絵に落とし込むには多少の慣れがいります。

そこで、ここからは稜線を捉えて塗るうえで重要なポイントを紹介しようと思います。

今回の内容は過去の私の失敗を元に書いているので、これを読めばより正確に稜線を捉える習慣付けができるようになります。

①稜線を超えて明暗を描きこまない

“稜線を意識できていない絵”と”修正後の絵”を比較して、稜線を超えて明暗を描きこまないとはどういうことなのかを紹介したいと思います。

スカートに注目してみると、左の絵ではハイライトがまんべんなく入っていて光がどう当たっているのかわかりにくいですが、右の絵では稜線を境にハイライトが入っていないので、左上から光が当たっているのが一目瞭然だと思います。

ハイライトを入れると絵が複雑に見えますが、 同時に光の当たり方が他の部分と矛盾しないかどうかを考えるのが大切です。

②影をつけるのをためらわない

顔などは立体的に塗ると可愛くなくなってしまいますが、それ以外の部分は稜線を境に塗り分けても、かわいさを損なうことはありません。

なので明暗を塗り分けることで立体的に見せられそうな部分を積極的に塗り分けていくと、絵の説得力が向上します。

③実物の資料を集める

稜線を捉えるためには、描くものを立体的に捉えることが肝になってきます。

なので、描きたいものの立体画像(写真や3Dなど)がある場合は、集めてみましょう。

絵を描き始めのうちは、ものを立体的に捉えることに慣れていない場合が多いので、 線画だけを見て稜線の位置を考えるのは難易度が相当高いと思います

なので、描きたい対象の実物の資料を見ながら、稜線の位置を考えるのをおススメします。

最後に

今回の内容を一朝一夕で完璧に理解するのは難しいかもしれません。

でも、稜線を意識して絵を描き続けると、しばらくして完全に理解できる瞬間が必ず来るので、頭の片隅にとどめておくといつかきっと役に立ちます。


 

ちなみに、アニメ塗りは稜線で明暗を塗り分けているお手本のような例なので、アニメを見る際に、塗り方をちょっと観察してみるのもよいかもしれません。

それでは!

絵の考え方

Posted by ken