【線画が苦手な方へ】線画を描かずに絵を上手くする考え方とは?
上手い人の線画に憧れて絵を描きはじめたものの、上手く描けずに落ち込んでしまう人は多いと思います。
しかし、それを気にする必要はありません。
なぜなら、 線画を描くことこそが、かえって絵の上達を阻害している可能性があるからです。
実は、ほとんどの場合、線画を描かない方が絵は上達します。
線画が下手で、線画を描くことにあまり乗り気でないときがチャンスです。
線画を描かずに絵を描いて効果的に絵を上達させていきましょう!
今回は、 「線画を描くと絵が上手くなりにくい理由」と「線画を描かない絵の考え方」について説明していきます。
このページの目次
線画を意識すると絵が上手くならないワケ
まず初めに、線画を描くと絵が上手くならない理由から説明していこうと思います。
それは 「線画で描くことで、本来あった情報をそぎ落としているから」 からです。
線画とは「境界を取り出したもの」
そもそも線画とは何かということについて考えてみましょう。
線画とは、
「境界をとりだしたもの」
です。
- 「ここは人と背景の境目だから線を引こう」
- 「ここで色が変わっているから線を引こう」
みなさんは、このようなことを考えて線画を描いているはずです。
しかし、よく考えて見れば分かると思いますが、線画を描いているとき境界以外には意識があまり行きませんよね?
実は、 境界以外の情報は「無意識のうちにそぎ落とされている」 わけです。
線で描くことで消される情報たち
具体的にどういった情報が削ぎ落されてしまうのかを見ていきましょう。
線画を使って描くことで失われる情報は大きく分けて三つあります。
1.立体感
上の二枚の画像を見てください。
左の画像は線がなくても球体とわかりますが、右の画像はどうですか?
…
球なのか、それとも円なのか、一枚だけじゃわからないですよね?
これは、線画の段階で 「立体感が失われた」 からです。
2.輪郭の情報
線画を使って絵を描いていると、ついつい「輪郭線は黒」と考えがちです。
ですが、 輪郭は常に黒色とは限りません。
上の画像における人の輪郭のように輪郭が明るい色の場合もありますし、
上の画像のライオンの鬣のように一本の線では描けない場合もあります。
- 輪郭ははっきりしているのか?
- 輪郭はぼやけているのか?
- 輪郭は明るいのか、暗いのか?
線画で描くときは、こういったことを考えずに、全て「線」とみなしてデフォルメしているわけです。
つまり、線画で描くことで 「輪郭の情報が失われて」います。
線で木や雲などの自然物がなかなか上手く描けないのは、線では輪郭を上手く表現できないからです。
3.塗りへの意識
白黒の漫画を思い浮かべてください。
下の画像のように線だけで描かれた絵のことです。
漫画では、色がなくても線画のおかげで色がわかりますよね?
しかし、逆に考えると、線画を描くことで「色づかいや塗りが多少曖昧でも物として捉えられてしまう」ということです。
つまり、線画を描いて色を塗ることで、線画に引っ張られて 「塗りへの意識が失われて」しまいます。
情報を失わずに描くにはどうすればよいのか?
では、上のように情報を失わずに描くにはどうすればよいのか?
その解決策が、「面でとらえる」ことです。
…と言われても、「面、何それ?」と思う方も多いでしょうから、次の見出しで詳しく説明していきます。
面で描くとはどういうことか?
面で描くとはどういうことか?
今回は立方体を例に、それぞれの違いをみていきましょう!
線でとらえると…
立方体を線でとらえると上のようになります。
線で描くというのは 「色と色との境界線や物体の輪郭を捉えて描く」 ことです。
面でとらえると…
立方体を面でとらえると上のようになります。
面で描くというのはわかりやすく言うと、「面が向いている方向の違いによって描きわける」ことです。
面で描くときは線で描くときのように「境界線を線で描く」のではなく、「境界線を境に 濃淡をつけることで塗り分けて描く 」イメージになります。
(上の画像には線画がないけど立方体だと分かりますよね。)
面でとらえる方法の応用例
面を意識して描くときは、「面が自分に対してどの方向を向いているか」で描き分けます。
もちろん、実際には場所によって微妙に角度が違ったりするのですが、それをある程度まとめて考えると、以下のように絵が描けます。
面でとらえる方法を応用すると、上の画像のように色の数を絞って絵を描くことも可能になるというわけですね。
上の絵では、同じ方向を向いている面が同じ色で塗られていることが分かると思います。
一朝一夕で理解するのは難しいと思いますので、描くうちに理解できればOKです。
面でとらえると絵が上手くなるワケ
面でとらえると絵が上手くなる理由
…
それは、
「線で描くより、より多くの情報を考えて描けるから」
です。
線と面で考える場合の情報量の差を見比べてみましょう。
線でとらえる場合…
先ほどお話ししたように、
- 輪郭線
のみを捉えることになります。
面でとらえる場合…
- 色
- シルエット
- ライティング
- 質感
の四つの要素を捉えることになります。
(ここでは、「なんか色々考えるんだな」というくらいの理解で大丈夫です。)
なので、面でとらえて描くと
複数の要素を同時に意識して観察することができるため、物体の観察力が飛躍的に向上します。
四つの要素については、次の記事で詳しく書いています。
最後に
以上が、線ではなく面でとらえる考え方の話になります。
面で描く練習を積むことにより、身の回りのものを3次元的にとらえることができるようになるので、なぜか絵がのっぺりしてしまうという人は是非試してみてください!
面でとらえて描くことができるようになれば、人物の形を取る力も向上するのでやって損はないと思います。
次回は、今回の考えを使ったメイキングを紹介します。
それでは~
<面に関する記事一覧>
- 第1回:「線で描くと絵が上手くならないワケ」
- 第2回:「絵を描くのに必要な四つの要素」