パースを使って空間を表現するための基本を徹底解説!

2019年12月18日

パースという言葉をご存じですか?

○○透視図法…といった用語を断片的に聞いたことがある方も多いかもしれません。

さて、パースについてですが…

パースについて簡単に説明しているサイトは多くあると思います。

しかし、この記事ではさらに踏み込んで、パースにおける基本的な図法の解説から、 なぜ図法が複数あるのか、どういった風に図法を使い分けるか、などについても詳しく触れていこうと思います。

パースについて納得しながら理解したいという方には、ぜひ読み進めてもらたいです!

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Ken
みなさんこんにちは。
kenです。

今回は、パースの基本をご紹介します。

パースとは?

パースとはパースペクティブ、つまり遠近法のことです。

perspective…遠近(画)法、透視画法、遠近図

weblioより引用

といわれてもイマイチパッとしない方もいると思うので、まずは「遠近法とは何なのか」について軽く触れたいと思います。

私たちが普段目にしている光景は立体(三次元)的に広がっていますが、絵や写真に収める場合は、それを平面(二次元)という制約の中で描く必要があります。

そのために使われるのが遠近法です。

つまり、 本来なら奥行きが感じられない平面の画像で、奥行きが感じられるようにするために使われる方法が遠近法というわけです。

その一つが今回ご紹介する透視図法になります。

「透視」といっても、たいそうなものではなく、仕組みが分かれば簡単に描けます。

遠くのものほど小さく描かれるのも遠近法のひとつです。

消失点とは?

パースを語るうえで切っても切り離せないのが「消失点」です。

ただ、消失点とは何かを知らない方も多いと思いますので、これも意味を見ていきましょう。

下の画像を例として考えてみましょう。

上の画像では、奥に行くにつれてどんどん建物が小さくなっていき、最終的に一点に集まっていくのが分かると思います。

この点を「消失点」と言います。

景色の中のいろんなものが一点に向かって集まっていくのを「消える」と見立てているわけですね。

消失点の求めかた

次に消失点の求め方について話していこうと思います。

消失点の求め方ですが、求め方はいたって簡単です。

「画像にある空間上平行な直線を延長し、複数の線(最低でも三本)が交わる点」を求めるだけ です。

最低でも三本とあるのは、二本の線が交わる点だと、消失点以外の可能性も考えられるからです。

例えば、下の画像を例に見てみましょう。


上の画像は、下のように直線がひけますね。

手すり・ベンチ・屋根は、すべて空間上では平行です。

消失点はこれらの線が交わる、画面右の点になります。

画面左にある線路・床にあるマットも、空間上で平行です。

この画像では、消失点は画面外の左側にあります。

このように画面の外に消失点がある場合もあります。

上の二枚の画像では、それぞれ一点ずつ消失点が分かりましたね、

なので、今回の例では、消失点は主に二つあることが分かると思います。

このように、直線を延長して複数の直線が交わる一点を求めることで、 消失点を割り出すことができます。

透視図法は三種類ある

さて、「パース」「消失点」の意味が分かったところで、実際の描き方について見ていきましょう。

まずは下の立方体を見てください。

三つとも立方体ですが、それぞれ見え方が違いますよね?

この見え方の違いこそが透視図法の違いによるものです。

「ものを見る角度によってものの見え方が違う」というだけのことです。

遠近を表す透視図法には、上に立方体が三つあるのと同じように、 大きく分けて三種類の方法があります。

はじめに、順番に三種類の方法を説明してから、追って詳しい説明をしていこうと思います。

­一点透視図法

上の立方体のうち、一番左にある立方体は一点透視図法で描かれています。

一番シンプルで基本的な方法なので知っている方も多いのではないでしょうか。

一点透視図法では、消失点は一つです。

名前と消失点の数が同じなのでわかりやすいですね。

二点透視図法

先ほどの立方体のうち、真ん中にある立方体は二点透視図法で描かれています。

二点透視図法では、 一点透視図法の時より水平方向に一つ増えて、 消失点は二つになります。

三点透視図法

先ほどの立方体のうち、一番右にある立方体は三点透視図法で描かれています。

消失点は三つあります。

三点透視図法は、二点透視図法の時に、高さ方向の消失点が加わっています。

より立体感・圧迫感のある印象を受けますよね。

なぜ三種類あるのか?

まずは、「なぜ三種類あるのか」という点について解説したいと思います。

「同じ立方体を見るのに、なんで三種類も見え方があるの?」

「三種類も上手く覚えられる気がしない」

と思う方もいるかもしれません。

ですが、実際のところ、そこまで難しい話ではありません。

というのも実際には、 一点透視図法・二点透視図法は、三点透視図法の延長のようなものだからです。

どういうことなのか詳しく見ていきましょう!

観測者の視線と垂直な方向には消失点はない

その前に、透視図法が三種類ある理由を知るうえで重要な事実を知っておきましょう。

それは、「観測者の視線と垂直な方向には消失点はない」ということです。

(ここでいう方向とは、数学でいうところの「軸」です。)

観測者の視線と垂直な方向とは?

「観測者の視線と垂直」というのは上のように人と面Aを同時に横から見たときに、

下の条件を満たすということです。

  • 視線と面Aが垂直に交わる
  • 人と面Aを横から見たときに、ともに断面が線になる



さて、 「観測者の視線と垂直な方向には消失点はない」とはどういうことか改めて見ていきましょう!

まずは下の画像を見てください。

どちらの画像も街並みを描いたものになっています。

赤線同士は実際に空間上にあるとしたら平行なはずですよね?

ですが、上の画像を平面的に見たとき、左の画像では赤線同士は平行ではなく、右の画像では赤線同士が平行になっていると思います。

この違いはどこから生まれるのかを見ていきましょう。

左の画像では…

奥に向かう直線は空間上では平行ですが、 遠近法の影響を受けて歪むため、 画面上では平行ではなくなってしまいます。

平行ではない直線はどこか一点で交わります。

その点が消失点というわけです。

右の画像では…

このような「観測者の目線と垂直な面を作る線」は画面奥に向かわないので、遠近法の影響を受けません。

なので、その面上にある平行な二直線は平面上でも平行なままです。

つまり、この二直線は決して交わりません。

よって、 観測者と平行な方向には消失点はないといえます。

­消失点の数の違いは、平行な方向の数の違い

上の話を踏まえると、透視図法における消失点の数の違いは、 「観測者の視線と垂直な座標軸の数の違い」 だということが言えます。

数式風に記すと、

(消失点の数)=3-(観測者の視線と垂直な座標軸の数)

となります。

一点透視図法・二点透視図法・三点透視図法で、上の式が成り立つかどうか見ていきましょう。

一点透視図法では…

本来3点ある消失点のうち、y軸とz軸が観測者の目線と垂直なのでなくなります。よって、消失点の数は 3-2=1 です。

  • x軸方向…消失点あり
  • y軸方向…消失点なし(観測者の視線と垂直)
  • z軸方向…消失点なし(観測者の視線と垂直

二点透視図法では…

本来3点ある消失点のうち、z軸が観測者の目線と垂直なのでなくなります。よって、消失点の数は 3-1=2 です。

  • x軸方向…消失点あり
  • y軸方向…消失点あり
  • z軸方向…消失点なし(観測者の視線と垂直

三点透視図法では…

本来3点ある消失点のうち、いずれも観測者の目線と垂直ではないので、いずれの方向にも消失点があります。よって、消失点の数は 3-0=3 です。

  • x軸方向…消失点あり
  • y軸方向…消失点あり
  • z軸方向…消失点あり


このように、すべての透視図法で先ほどの式が成り立つことが分かって頂けたでしょうか?

話をまとめると、一点透視図法と二点透視図法は、三点透視図法の特殊な場合ということです。

 この見出しでのまとめ  

  • 三種類の透視図法の本質は同じ
  • 観測者の目線と垂直な座標軸に消失点は存在しない

三種類の使い分け方

次に、三種類の使い分け方について話していきたいと思います。

一点透視図法の使い方

林道

一点透視図法は 「画面中央(画面奥)に視線を誘導したい」場合に有効です。

これは、一点透視図法では、奥行き方向にしか遠近感が生じないため意識がそこに引き付けられるからです。

二点透視図法の使い方

煉獄門

二点透視図法は 「客観的に情景を描写したい」場合に有効です。

これは、画面端に消失点が来ることが多く、一点透視図法に比べ、遠近感を意識しにくい画面になることが多いからです。

三点透視図法の使い方

スチームパンク

三点透視図法は 「高さ・臨場感を表現したい」場合に有効です。

これは、三点透視図法のみが高さ方向に消失点を持つことからも明らかですね!

現実では、観測者の視線と座標軸が完全に垂直になることはほとんどありませんので、三点透視図法が一番多いです。

 透視図法の使い方のまとめ  

  • 一点透視図法は、「奥行き」を表現するのに向いている
  • 二点透視図法は、「客観的」に表現するのに向いている
  • 三点透視図法は、「臨場感」を表現するのに向いている

三種類の使い方に絶対的な正解はない

ここまで見ると、

「三種類の使い方を間違えると、良くないのではないか…?」

と思う方もいるかと思いますが、そんなことはありません。

というのも、 消失点の取り方が正しければ「どの方法で描いても自然な絵が描けるから」です。

傾向として、上のようになっているだけで「この絵は絶対にこれでなきゃダメ」というものはありません。

はじめは軽く描いたラフに沿って消失点を取ったり、参考にする写真の透視図法に合わせたりするくらいの感覚で大丈夫です。

慣れてきたら、上のように使い分けるとよいです。

まとめ

ということで、パースについて説明しました。

今回の記事でのポイントは以下の通りです。

 この記事のまとめ  

  • 遠近法は立体を平面で表現するための技法
  • 絵では、消失点に向かって線が集まる
  • 直線の交点を求めると、消失点が分かる
  • 透視図法には三種類の方法がある
  • 三種類の本質は同じ、どれを使うかに正解はない
  • まずは、写真などを参考にしてパースに慣れるべし


写真を参考にさえすれば、それらしいものが描けると思います。

まずは、写真を参考に描きはじめてはいかがでしょうか?

それでは~。

絵の考え方

Posted by ken