なぜグリザイユ画法が陰影を上手くつけるのに最良なのか?
グリザイユ画法という画法をご存じですか?
「名前だけは聞いたことがある…」という方もいるかもしれません。
この描き方を知れば、あなたの
「背景を描きたいのに上手く描けない…」
「厚塗りが上手くできない…」
といった悩みを解決できるかもしれません!
今回は、「なぜグリザイユ画法が、陰影が上手くつけるために最良なのか」…。
グリザイユ画法を使う上での核心ともいえる部分について書いていきます。
描き方を見たい方は次の記事をどうぞ!
このページの目次
グリザイユ画法とは?
まずはグリザイユ画法の意味を軽く理解しておきましょう。
グリザイユ画法とは
「白黒のみで陰影をつけ、最後に着彩する画法」
のことです。
後で作例をのせますが、大まかなイメージとしては下図のような流れです。
描き方の流れを、図にすると下のようになります。
グリザイユ画法を使うメリット
グリザイユ画法がどういった描き方のことを指すかは分かったと思いますが、
「なぜこの描き方で描く意味があるのか」
「後で彩色する方が面倒くさそう…」
と思う方もいるかもしれません。
なので、グリザイユ画法を使うメリットについてお話していきたいと思います!
グリザイユ画法で描くメリット…それはずばり 「ライティングを意識できる」 ということです。
ライティングとは?
ライティングとは、「lighting」、すなわち
光の当たり方のこと
です。
具体的には、
- 絵における光源は何か(太陽・照明 など…)
- 光は絵のどの方向から指しているか
- 光によって物体の色はどのように変わるか …
といったことを考えるのが、ライティングを意識するということです。
ライティングを意識して明暗をつけることで、写実的な表現ができるようになります。
つまり、先ほどの話と合わせると、グリザイユ画法で描くメリットは、
- 光の当たり方に意識を向けることができる
- より写実的な表現が可能になる
ということです。
白黒写真は色がないのに、写実的に見えますよね?
あれは、色がなくてもライティングが正確なのでそう見えるわけです。
この見出しでのまとめ
- グリザイユ画法では、初めは白黒のみで描く
- グリザイユ画法で描くと、ライティングを意識できる
グリザイユ画法でライティングが上手くなる理由
それでは、グリザイユ画法とライティングの意味が分かったところで、「グリザイユ画法でライティングが上手くなる理由」を見ていきましょう。
グリザイユ画法以外ではライティングに意識が向きにくい
まずは、グリザイユ画法以外の描き方では、ライティングに意識が向きにくい理由を見ていきましょう!
グリザイユ画法以外の描き方では、基本的に、「カラーピッカーから直接色を選んで塗っていく」やり方になります。
このとき、塗る色について
- 色相
- 彩度
- 明度
の3つの要素を同時に考える必要があります。
明度とは?
明度とは、読んで字のごとく
「明るさの度合い」
のことです。
視界が真っ白になるほどの強い光を見ている状態から、何も見えない真っ暗な状態までを0~100までの数字に置き換えたものです。
100は真っ白 、0は真っ黒です。
デジタルで描いている方は、カラーピッカーを使っていますよね?
ピッカーを上下方向に動かすと変わるのが、明度です。
ちなみに「色相」「明度」「彩度」に相当する部分は下図の通りです。
ぶっちゃけ…、この三つの要素を同時に考えるのって、複雑で面倒くさいですよね。
例えるなら、金庫のダイヤル式のロックが3錠もあるようなものです。
そう、「複雑で面倒くさい」のです。
これが、グリザイユ画法以外で描くデメリットです。
グリザイユ画法以外の塗り方では、色を構成する3つの要素を同時に考える必要があり、 明度に対する意識がおそろかになりやすいのです。
「色の明度」=「実際の明るさ」ではない
今、色の明度は明るさを示したものと言いましたが、実際には「色の明度と実際の明るさは異なり」ます。
というと、多くの方は、
「何言ってんの?さっき『明度=明るさ』って言ったじゃん」
と感じると思うので、「実際の明るさとは何を指すのか」等を含め詳しく解説していきます!
理解できると興味深い話なので、さっそく見ていきましょう!
まず例を見てみましょう。
例えば、下のような絵があるとします。
このとき、スポイトで吸い取ると枠で囲まれた部分の明度は「82」です。
ここでの明度は、「枠内の色を作るときに必要な、データ上の明度」です。
次に、この画像を白黒化(モノクロ印刷)してみましょう。
すると、枠で囲まれた部分の明度は「47」になります。
ここでの「明度」は、「人が実際に感じる明るさを明度にしたもの」です。
上の二枚の画像では、同じ部分の色をスポイトで確認したのにも関わらず、明度が変わりましたよね?
このように「色の明度は、その色を白黒で表示したときに変化」します。
この現象が起こるのは、「色相」や「彩度」が実際に感じる明るさに影響を与えるからです。
例えば、上の画像はどちらも「彩度100、明度100」ですね。
ただ、「どちらが明るく見えるか?」と聞かれたら、ほとんどの人が左と答えると思います。
これは「色相が実際に感じる明るさに影響を与えているから」だと、言えますね!
つまり、カラーの状態での明度とは、色を作り出すのに必要な「データ上の明度」であり、人が感じる「実際の明るさ」とは違うということです。
よって、 「白黒のときの明度こそが、ライティングや明るさを意識するうえで重要な「実際の明るさ」を示したもの」 といえます。
グリザイユ画法ではライティングに意識を向けることができる
一方のグリザイユ画法では、彩色する前は白黒だけで描くので、「明度」を考えるだけですみます。
つまり、
色相…彩色後に考える彩度…彩色後に考える- 明度
ということです。
このように、グリザイユ画法は色の構成要素を細分化して考えることができるため
ライティング(≒明度)に意識を向けやすいです。
例えば、数学では、暗算が計算ミスにつながりますが…
丁寧に式変形をして、一つ一つ計算することでそれを減らすことが出来ますよね。
ちょうどそれと同じように、グリザイユ画法では「明度」と「色相・彩度」を分けて考えることで、ライティングをより正確に行うことができます。
この見出しでのまとめ
- 色を選ぶとき、「色相・彩度・明度」を考える必要がある
- グリザイユ画法では、初めは「明度」を考えるだけで良い
最後に
ということで、 「なぜグリザイユ画法が、陰影が上手くつけるために最良なのか」 ということについての話でした。
今回のポイントをまとめると、以下の通りです。
この記事でのポイント
- グリザイユ画法とは、初めに白黒で描き、後で着彩する画法のこと
- 色の要素を分けて考えられるので、ライティングを意識できる
- グリザイユ画法を使うと写実的な表現をしやすい
グリザイユ画法は、明暗を意識して塗ることができるので、 デッサンほどではありませんが非常に効果的な練習方法です!
僕がデッサンをあまりせずに絵を上達させることができたのはグリザイユ画法のおかげといっても過言ではないくらいには便利な手法なのでぜひ実践してみてください。
応用もできるので、慣れていて損はないですよ。
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次の記事では、グリザイユ画法を使った描き方について紹介しています。
よろしければ是非ご覧ください。
それでは~